第82回


アラン・ルービン

フランス、ニース。91年の7月だった。
これはタワーがニースのジャズ・フェスに出るようになった2年目の事だった。
ミュージシャンは一生懸命働く。僕らがいる5日間はその街は「仕事兼休暇」の様相を訂していた。ホテルはビーチ沿いの道にある。なんてクールなんだ!
屋上にはプールもあるぞ!
その週、僕らはブルース・ブラザースとジョイントだった。

今晩のストーリーはミスター・伝説のアラン・ルービンに捧げよう。
アランは映画「ブルース・ブラザース」にトランペットとして出演しており、バンドとも数年間のライブツアーをしていた。
彼は先週の月曜日ニューヨーク市で亡くなった。
引っ張りだこのセッション・プレイヤーで、ロックからR&Bまで全てのスタイルで演奏できた。
そしてユーモアのセンスもあった。

その週ニースでは皆、プールの周りに群がって日焼けと『肘曲げ運動(酒を飲むため)』に余念がなかった。
ああキール・ロワイヤル。
アランはいつだってジョークをかまし、僕らをプールサイドに釘付けにした。

ともかく。今日ショートストーリーの準備をしていた時、LAタイムスでアランの死亡記事を見つけたんだ。
以前にこの話を聞いたんだけど、今日再びこの記事で、思い出したんだ。

アランはLAで映画撮影の間、メルセデス300SLを買った。
彼はレコーディング・セッションで仲間ミュージシャンにその写真を見せていた。
と、プロデューサーが
「この車を持ってるだって? でも君はしがないトランペット・プレイヤーだろ?」と。
頭の回転の早いルービンはこう即答したのさ
「ま、僕はフリューゲルホンも吹くんだけどね」と。

アラン。安らかに眠ってくれ。