第63回


二つの物語。

1989年のニュー・ヨーク・シティだった。
僕はスタジオ・ミュージシャンとしてたくさんのアーチストのアレンジの仕事をする。そして、常々自分のカメレオンっ振りに自信を持っていた。(様々なアーチストのテイストに自分を合わせられると自負)

さて、今回はヘヴィ・メタルといくか…。
記憶が合ってるなら、僕らはその時ボトム・ラインに出演していた。
バンド"Riot"はスタジオ入りしていて、その時のレコーディングで僕にアレンジをして欲しいと連絡してきた。

彼らは日曜の午後スタジオに来れるか知りたがっていた。その日は(僕らがNYにいる)最後の日だった。
プロデューサーが金曜の朝、トラックのカセット・テープをホテルまで届けてくれた。

僕はヘッドホンを着けプレイ・ボタンを押した…ぅわお…_| ̄|○
メタル…がっつりヘヴィだぜ。
これは僕にとっての第一歩だった。
でも、実際これにファンク・スタイルを持ち込むのは楽しかった。

楽しんで譜面を書き、翌日それを僕のNYでのコピーイスト(雇われて、文書や写本を手書きで移す人)へ届け、セッションへの準備は完了だ。

タイトルだって覚えているさーーエヘン! On Your Knees ってんだ。

あの別の曲の駄洒落じゃないけど、可能ならチャートの上を目指したかったな。

セッションはヴィレッジにあるグリーン・ストリートスタジオで、だった。
僕らはいつも54th通りと6th通りの角にあるワーリックに泊まっていた。
正午スタート。

自分用メモ:前の晩にボトム・ラインでプレイした翌日の昼にセッションの予定を入れてはイケナイ。
例えそれが、ほんの34歳の時であったとしても。
あ〜あ。若かったよな…。

さて、ここでギアを入れ替えて、その週の始めクラブで起こった事を話そう。
とある新人シンガーからテープを手渡された。彼はタワーに興味があったらしい。
僕らは再び新しいヴォーカルを探しているところだったんだ。

彼はすごく良かった。
遅かれ早かれ決まるだろう。
本当に素晴らしかったので、ちょっと顔を出さないかとスタジオから電話をした。
彼はスタッテン島に住んでいたんだ。

こうしてトム・ボウズに会ったのだ。。

Riotとのセッションは無事済み、アルバムはPrivilege Of Powerというタイトルで90年にリリースされた。



が、それより重要なのは今日に至るまで僕とトミーとの間に素晴らしい友情が結ばれた事だろう。
彼がEBSのファースト・アルバムに参加してくれたのは大きな喜びだ。

トムがTOPのCD、Monster On A Leashで最初にレコーディングしたのはSomeone Newだった。
あの曲をライブでやったのは一度だけだった。皮肉な事にボトム・ラインでは総立ちとなったが、二度とセットリストには上がらなかった。

そんなわけで、EBSで再びトミーがあの曲を歌って、レコーディングしたのはうれしい事だ。
今では毎回のショーでSomeone Newを演奏する。そして毎回総立ちになるのを楽しみにしてるんだ。

ではまた来週!