第11回


グレッグ・アダムスとランディ・ブレッカー

それは1972年かそこらだったと思う。
名前は覚えてないんだけど、シカゴのクラブでギグをしていた。

その日早く、僕はSchilkeという店に立ち寄り、マイク・ヴァックス(モデル) 13A4Aというマウスピースを買った。
店ではかなりいい感触で、これで自分のハイノートが改善できるだろうと、 思ったんだ。

都会でのハイノート。。。まったくね!

その後その夜そのクラブで、ファーストのステージで新しいマッピを使った。

キャリア間違い・大きな悩みの種・・それまでそんなジレンマは一度もなかった。
1時間(使ってみて)で、次のセットにも使えるかわからなかった。

その後ニュースが飛び込んできた。

えーーー#%*$! !! ブレッカー・ブラザースのランディとマイケルがセカンド を見に来るっていうんだ!
どうしたらいい!?
僕はBS&Tのファーストアルバムを聴いた時からランディの大ファンで、これが初 めて彼に会う機会だった。

演奏した。
僕はめいっぱい吹き鳴らした。

彼らは途中で帰っていった。 すんばらしい。。。 僕は古い方のマッピで感触を取り戻すのに2・3日かかった。
最近ではその13A4Aはペーパー・ウェイトになっている。

親愛なる友、マイク・ヴァックスよ。すまん。

さて、早送りするとしよう…。

多分89年。
僕らはポリ・ジャズ・フェスティバルに出るため、ポリに向かう前の晩、インタ ーコンチネンタル・ヘルシンキにいた。

僕はサウナから出てプールへ行こうとしていた。
プールの横には飛び込み台があった。

心臓発作なんて頭をかすりもしなかった。
クール・ダウンのためにプールに飛び込もうと決めた。
僕はメガネなしでは碌に見えないので、飛び込み台からキャノンボールのように 飛び込んだ。

中空で誰かが
「おい!」っと叫ぶのを聞いた。
「見ろよ!」と。

そう。。。それはまさしく。。。

ランディ・ブレッカーだ。

うわ!

もう少しで彼にぶつかる所だったよ。
こんな風にだれかに会うなんて。。神に感謝。
ブレッカー一家もポリに行く途中だった。

ともかく彼はクールだった。
それで数人の裸の女性達の前で僕らは友人になったんだ。
僕ら二人ともこれってスゴイや、と思ってね。

あのシカゴでの夜の事を話すと、彼は
「いや、あの晩、君はすばらしかったよ。
僕らはただ時間がなくて、途中で出なくちゃならなかったんだ。」
「完敗だよ! フュー!」
っと。

さて、また早送りして…。

96年以降、僕は日本のアーチスト、ドリームス・カム・トゥルーの仕事をしている。
グループのCD数枚と、リード・シンガー吉田美和のソロプロジェクトが2枚。
彼女の2枚目のソロはBeauty And Harmony Twoというタイトルだ。
それはオール・スターがラインナップされている。ぜひググってみてくれ。
マジ印象的なキャスティングなんだ。

誰がいると思う?

そう。ランディとマイケル。

彼らは12年も一緒にプレイしていない、これはまさしく”何か”だろう。

このCDにはアレンジャーがいなかったんで、僕はこのチャンスを多いに楽しんだ。

かなり「ブレッカーぽく」アレンジしてね。
この日は僕のキャリアにとってまさしくハイライトだった。
なんというスリル!

残念ながら、それが彼ら二人一緒の最後のセッションだった。
この経験を僕は決して忘れないだろう。


PS. 去年の3月にBerksでランディを見た。
今まで以上にすばらしかった。

では皆さん、また来週。